避難ハッチの取り替え工事では、カバー工法が採用されます。
工期とコストの両面から見て最も合理的な方法だからです。
しかし、カバー工法と聞けば、屋根や外壁の改修工事をイメージする人もいると思います。
避難ハッチと屋根もしくは外壁は、全く別物ではありますが、工事においては共通する部分も全くないわけではありません。
今回は避難ハッチ、参考として屋根と外壁のカバー工法における施工要領、コスト、工期などについてお伝えします。
ご自宅の屋根や外壁の塗り替えが必要になったときのために、この記事を思い出していただけると幸いです。
ココがポイント
- カバー工法とは古いものに新しいものを取り付ける工事
- 屋根や外壁の改修にもカバー工法が行われている
- カバー工法とは工期の短縮やコストの節約に貢献
目次
カバー工法とは?
カバー工法は、既存の部品、部材、資材を、新しいもので覆い被せて仕上げる工法です。
主に屋根や外壁の改修工事によく使われます。
避難ハッチの交換も状況によりますがカバー工法であれば、1台あたり2時間前後で工事は完了します。
バルコニーに設置されている避難ハッチは、新設時にあらかじめ中枠をコンクリートスラブに埋め込むようになっています。
中枠の腐食が激しくても、これを撤去するためにはコンクートスラブのハツリ(砕くこと)の労力、騒音、工期の長期化などが明らかであり合理的ではありません。
そこで中枠を包み隠すために、カバー工法に適した改修用の避難ハッチが各社で開発されています。
改修の際に採寸してオーダー品を調達する場合があるのは、中枠を隠すために標準サイズでは若干の過不足が生じるためです。
腐食した中枠はさび止めで食い止め
腐食が進行しないように、コンクリートスラブに埋め込まれた中枠には、さび止めを施すことになります。スプレー式で塗布するため時間もかかりません。
さらに改修用の避難ハッチを設置後は、周囲に防水処理としてコーキングするため、劣化した中枠が原因の雨漏りも予防されます。
避難ハッチのカバー工法の要領
バルコニーに設置されて、腐食が目立つ避難ハッチをカバー工法で取り換える工程を簡単に説明します。採寸やオーダー品の手配などは割愛します。
- 上蓋と吊り下げはしごを撤去
- ボルト類をサンダーで切断
- 下蓋を撤去
- 中枠のさび止め処理
- 改修用ハッチの上蓋を取り付け
- 改修用ハッチの下蓋を取り付け
- 改修用ハッチの吊り下げはしごを取り付け
- 新設した避難ハッチの周囲をコーキング
- 動作と降下のテスト
これが大まかな工程になります。
想定する工事完了時間は2時間を見ておけば十分でしょう。
入居者さんの迷惑にならないよう、なるべく短時間で1回きりの取り替え工事で済ませたいところです。
避難ハッチの工事は消防整備士が立ち合い
避難ハッチの工事は消防設備士甲種5類の資格所有者の立会いが必要です。
消防署への届け出や報告も必要となる場合があり、誰もが工事を担当することができるわけではありません。
言葉で工程を説明すると簡単そうに見えますが、腐食度合いが想定以上の避難ハッチも多く、蓋やはしごの階下への落下なども考えられるため、慎重に工事は行われます。
サンダーによるボルトの切断では、火花が飛び散るため、誤って可燃物に引火しないよう周辺の整理整頓も必要です。
場合によっては入居者さんの荷物の移動をお願いすることもあります。
消防設備士が立ち会っていながら引火の事故が起こってしまっては、笑い事では済まされません。
避難ハッチのカバー工法のコストや工期
カバー工法による避難ハッチの取り替え工事は、前述しましたが1台あたり2時間前後で終わります。
奥行の広いバルコニーなら作業スペースが十分に取れるため、もっと短い時間で終わることもあります。取り替えには改修用避難ハッチが使われますが、マンションオーナー様や管理組合の方々への費用負担を減らすべく、ボリュームディスカウントを実施しています。
なお工事費を含んだ総額は別途見積もりをご依頼ください。
改修用避難ハッチの価格(関東1都6県)
※600角ハッチ・7段はしご使用の通常品
※発注個数、状況によって価格が変動する可能性があります。
改修用避難ハッチの価格(その他の地域)
※600角ハッチ・7段はしご使用の通常品
※発注個数、状況によって価格が変動する可能性があります。
コストダウンの例
東京都北区 交換台数:8台
物件オーナー様からのご依頼。
大規模修繕工事中に避難ハッチの交換の必要があったためお問い合わせをいただきました。
費用を抑えて交換ができ、物件の収益性向上に貢献できました。
交換費用:1,032,000円 ←約50%コストカット
大阪府大阪市 交換台数:2台
避難ハッチ交換の交換の必要性があり建設会社様からお問い合わせ。
費用を抑えての交換ができ、案件の収益性向上が図れた事例となります。
交換費用:318,000円 ←約37%コストカット
神奈川県相模原市 交換台数:3台
塗装・防水会社様から修繕工事中にお問い合わせをいただきました。
費用を抑えての交換ができ、案件の収益性向上が図れました。
交換費用:387,000円 ←約50%コストカット
神奈川県三浦郡 交換台数2台
管理組合様から、管理会社様の交換費用見積もりが高くてお問い合わせをいただきました。
費用見直しのご提案をさせていただき施工を実施。
サイズの大きいものが1台あり、費用は若干高くなりましたが管理会社の見積もりよりは安く交換を実施できました。
交換費用:322,500円 ←約36%コストカット
屋根や外壁のカバー工法
避難ハッチの腐食が目立ち始めたら、建物の屋根や外壁も劣化が進んでいると思われます。しかし例外もあります。
とあるマンションの事例ですが、築10年を過ぎたころから南側の外壁タイルが浮き出しており、点検で指摘を受けました。
自然落下による事故を防ぐため、浮きが目立つタイルは全て剥がしているため、南側の壁面のみがまだらになっています。剥がしたタイルの部分は下地がむき出し状態で、いまだに補修の目途は立っていません。
これではマンションの資産価値が下がってしまい、入居者の方が万一、売却に踏み切ったとしても相場より低い価格で売り出さなければ買い手は付きにくいかもしれません。
築10年程度ですと避難ハッチの腐食はまだ見られず、内装や他の設備に問題はないようです。常に紫外線や風雨にさらされ、温度や湿度の影響を受ける外壁や屋根の耐用年数は比較的短い傾向にあるのかもしれません。
屋根(屋上)工事の要領
ここではマンションの大規模修繕における 屋上(平面)の防水工事をカバー工法で行うことを前提に、概要をお話しします。
屋上の防水工事の必要性を簡単に言えば、竣工した後は野ざらしが続くため、20年30年と長い時間が経てば、見た目以上に防水性能は衰えている可能性は大きいです。
カバー工法は劣化した屋根材を撤去しないため、工期の短縮、作業コストの節約に繋がります。
また既存の屋根材と新しい屋根材の二重構造になるため、防水性能、耐候性などが向上します。
ウレタン防水の密着工法を例にすると、工程の流れは、
- 下地調整(既存の屋根材)
- プライマー塗布
- ウレタン樹脂の塗布
- メッシュシートの張り付け
- ウレタン樹脂の塗布
- トップコートによる仕上げ
となり、工期は1週間前後です。
ウレタン防水工事以外にも、FRP防水、シート防水、アスファルト防水がありますが、特徴やコスト、面積などにより選定されます。
各工事の相場を独自調査でまとめました。
あくまでも参考としてご覧ください。
工事種類 | 1㎡あたりの費用 | 工期 | 対応年数 |
ウレタン防水 | 3,000円〜6,000円 | 3日〜6日前後 | 10年〜12年 |
FRP防水 | 4,000円〜8,000円 | 3日〜4日前後 | 10年〜15年 |
塩ビシート防水 | 3,500円〜7,000円 | 3日〜5日前後 | 12年〜20年 |
アスファルト防水 | 5,000円〜8,000円 | 5日〜7日前後 | 15年〜25年 |
※当社の独自調査
外壁改修工事の要領
外壁の改修工事は、
- カバー工法
- 張り替え
- 塗装(塗り替え)
の3通りあります。
ただし、これらの工事は一戸建てに適しており、大規模マンションなどは塗装やタイル貼り、その他の工法が多くなっています。
一戸建てに窯業系サイディングでカバー工法による工事手順を簡単に説明すると、
- 足場の設置
- 雨どい、エアコン室外機、メーカーボックスなどを借り撤去または移動
- 下地(胴縁の取り付けなど)工事
- 窯業系サイディングの施工
- 窓周辺の見切り材取り付けほか細かな工事
- 防水のためのコーキング
- 足場解体
という流れになります。
窯業系サイディングの他に金属系サイディングを用いる場合もありますが、どちらを選ぶかは施主や工事業者とコストなどを考慮して決定します。
3通りの外壁改修工事の相場については、2階建て中古住宅の外壁100㎡超の施工範囲を想定して独自調査でまとめました。
あくまでも参考としてご覧ください。
工事種類 | 総工事費用 | 工期 | 対応年数 |
カバー工法 | 120万〜250万 | 10日〜20日前後 | 30年〜40年 |
張り替え | 130万〜300万 | 10日〜30日前後 | 30年〜40年 |
塗装(シリコン) | 60万〜170万 | 7日〜12日前後 | 10年〜12年 |
※当社の独自調査
カバー工法や張り替えは工期も長くコストの負担も大きいですが、耐用年数はかなり長期です。
工期やコストで有利な塗装を選びたいところですが、住まいを後30年維持させたいとした場合、
- 塗装による改修工事はあと2~3回は必要
- カバー工法や張り替えなら1回で十分な可能性が高い
ということでトータルの負担費用でかなり差が出ることがあります。
見積もりの際は長期的な観点を持って検討することが重要です。
【参考】外壁塗装の悪質リフォーム業者の実態
リフォームに関するトラブルの電話相談件数は、2019年度で8,238件でした。
1日に20件以上です。
あくまでも住宅リフォーム・紛争処理支援センターへの電話相談件数ですから、氷山の一角と言っても過言ではありません。
特に外壁塗装に関しては、「手抜きがしやすい」こともあって、問題が即座に発覚しにくい点が挙げられます。
基本的に外壁塗装は、下塗り、中塗り、上塗りの3度塗りです。
見積書では3度塗りと明記していても2度塗りしかしない、グレードの低い塗料で塗るなど、コソコソと利幅を増やす方法がまかり通る世界ではあります。
留守の間に工事が進む場合は、やりたい放題です。
仮に施主が在宅していたとしても、一日中、工事を見学することは珍しいでしょうし、ましてや3度塗りが基本ということを知らない可能性があります。
支払いを終えて数か月経過してから、外壁の異常を見つけたとしても手遅れです。
業者に連絡したところで二度と通じない可能性もあります。
いかに信頼できるリフォーム業者や塗装業者を選ぶか、非常に難しいところではありますが、工事実績や実際に施工した施主の声を聞くなど、予防に努めましょう。
※出典:住宅相談統計年報公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター
まとめ
避難ハッチおよび屋根や外壁のカバー工法についてお伝えしました。カバー工法は、既存のものを撤去せずにリニューアルされるため、工期短縮とコスト節約に貢献します。スマートフォンの画面が割れても、カバー工法では修復不可能です。そう考えると改修においては、施主や工事業者のどちらにとっても合理的な工事の手段であることがわかります。
避難ハッチもカバー工法により、1台あたり1~2時間で工事が完了します。交換時期だけど他社の見積もりが高いとお悩みの場合は、当社にご相談ください。1台から大幅なディスカウントを実施しています。