避難ハッチ

避難ハッチから避難ができない!降下空間に障害物が置かれるリスクとは?

マンションベランダ

マンション火災は本当に怖いものです。タワーマンションともなると「はしご車」が届かない階層もあるわけですから、どうしても非常階段が頼りになります。避難ハッチは緊急時における避難経路ですが、見方によれば避難による最後の砦とも言えます。

しかし現実の避難ハッチは、ベランダに設置されて長年にわたって風雨にさらされることから、錆や腐食で使用できなくなっていることがあります。また避難ハッチの上にモノが置かれていることも珍しくありません。よく考えてみれば緊急時の避難経路を潰していることになります。そこで今回は、避難ハッチの本来の目的をいつでも果たせるよう、避難の妨げとなる障害物についての紹介やベランダの通行スペースを確保する方法をお伝えしたいと思います。

ココがポイント

  1. 避難経路に物を置く行為自体が法令違反という自覚を持つという自覚を持つ。
  2. 避難ハッチの吊り下げはしごが延びる空間にはモノを置かない
  3. 避難の際に邪魔になる障害物は物干し竿エアコン室外機

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避難ハッチの降下障害とは

避難ハッチは、一般的には話題にならない製品です。その上で「降下障害」という、さらに馴染みのないワードが並ぶと何のことなのか、さっぱりわからない人もいることでしょう。

避難ハッチの降下障害とは、

  • 避難ハッチ周辺やふたに私物があるため開くことができない
  • 避難ハッチの吊り下げはしごが障害物で十分に伸展できない

という状況により降下できないことを言います。

そもそもベランダは共用部分ではありますが、入居者が優先的に使用できる専用使用権が認められています。
そのため管理は入居者がしなければなりません。さらにベランダは緊急の避難経路であるため、避難の妨げとなるように私物を置くことは禁じられています。
いざというときに避難ができないようでは、避難ハッチの設置やベランダを共用部分としている意味がないためです。残念ながら降下障害は珍しいことではなく、入居者への意識付けや定期点検時の指導により粘り強く改善していくことが必要です。

吊り下げはしごは完全伸張させる

避難ハッチに収納されている吊り下げはしごは、使用時に完全に伸張させることで安全が確保され、降下することができます。実際に吊り下げはしこが伸び切らなければ、たわみがある状態で降りることになるため、足元も非常に不安定で踏み外しや最悪のケースとして落下などのリスクが高まります。そのために避難ハッチの真下は常に何もないことが理想です。しかし真下に障害物があったとしても使用可能な避難ハッチがあります。ORIRO(オリロー)の吊り下げはしごは「パンタグラフ式」と「スライド式」があり、スライド式は障害物があっても降下が可能な設計となっています。新規に設置する場合や改修および劣化による交換の際は、「スライド式」の吊り下げはしごをセットした避難ハッチを検討してみてください。

共用部分に物を置くことは禁止

各都道府県の火災予防条例では、マンションの共用部分に避難や消火活動の妨げとなるものを置くことを禁止しています。例えば東京都の火災予防条例第53条の2では、火災の予防または避難に支障となる物件を置くこと等の行為の禁止を定めています。そのため避難ハッチの周囲や吊り下げはしごの伸張に邪魔になるような場所には、私物を置いてはいけません。

万一、消防署からマンション管理者へ改善命令が下れば、厳しい姿勢で入居者に対応を求めることになります。命令を無視すると罰金や拘留が課せられる可能性があるためです。では具体的に、どの部分に物を置いてはならないのかを説明します。

※出典:東京都の火災予防条例

降下空間と避難空地

避難ハッチに関する降下空間や避難空地の説明、図解においては、福岡市消防用設備等の技術基準を例として引用します。

降下空間

降下空間とは、避難器具を使用できる状態にした場合に、当該避難器具の設置階から地盤面その他の降着面(以下「降着面等」という。)までの当該避難器具の周囲に保有しなければならない避難上必要な空間をいう。

避難空地

避難空地とは、避難器具の降着面等付近に必要な避難上の空地をいう。避難空地には、当該避難空地の最大幅員(1mを超えるものにあっては,1mとすること。)以上で、かつ、避難上の安全性が確保されている避難通路が設けられていること。具体的に図で表示すると、このようになります。

あくまでも例示になりますので、詳細は所轄の消防署でご確認ください。

この図を見れば、降下空間や避難空地が必要である理由が見えてくるのではないでしょうか。さらには、何が避難の邪魔になるかも同時に思い浮かんでくるはずです。避難ハッチの吊り下げはしごを使って階下に移動するためには、

  • はしごを伸ばす空間
  • 人が通れるだけの空間

を確保しなければなりません。

避難ハッチの周辺にモノが置かれるとふたの開閉ができないなど避難の準備に手間取ります。また階下のベランダに荷物が山積みになっていると、そもそも避難ハッチを使って降りることができません。また避難ハッチは1階ごとに互い違いに設置されています。

No: 2256402|写真AC

一直線上に設置すると、全ての避難ハッチが開いている場合、降着時に足場が不安定になるためです。実際には延び切ったはしごが邪魔になってふたが開けられないこともあるでしょう。効率よく安全に避難するためには、避難ハッチ周辺には何もないことが理想的です。

※引用:福岡市消防用設備等の技術基準

避難ハッチの障害物となるもの

避難ハッチを開くと真下に洗濯機が置かれていると、吊り下げはしごが伸張し切れずに避難に支障をきたす恐れがあります。万一の時に、そのような場面に遭遇すると冷静さを失いそうになるのではないでしょうか。
吊り下げはしごが十分に伸び切っていない状態で降下しようとすると、最悪の場合はベランダ外へ転落の可能性もあります。避難中の二次災害は避けたいところですが、残念ながらベランダが避難経路だという意識の薄い入居者もいるため、降下や避難に支障がでるように私物が置かれているケースも見られます。実際に避難ハッチの点検時に多いとされるベランダに置かれがちな障害物となるものや、避難経路を確保し降下障害を回避する方法について説明します。

物干し竿

※No: 2997000|写真AC

避難ハッチの真下に物干し竿があると、吊り下げはしごが伸張できないため降下ができません。物干し竿は避難ハッチの降下空間に干渉しないように設置します。建物の設計段階で降下空間に干渉しないよう、物干し竿用の金具は取り付けられているはずです。しかしベランダが狭い場合は、干渉を逃れることができないケースもあります。その際は部屋干し、または物干し台あるいは物干しスタンドなどを利用して、干渉を避けることが望ましいです。ベランダ上のスラブに物干し竿用の吊り下げ金具が取り付けられている場合は、避難ハッチから遠い場所かどうかを確認しましょう。

エアコン室外機

※No: 2701093|写真AC 一部加工

夏の気温上昇は尋常ではありませんので、エアコンが贅沢品だったのは過去の話となり、今は熱中症から身を守る生活必需品です。マンションの場合はエアコンの室外機をベランダに置きますが、避難ハッチの真下を避けて据え付けるようにします。エアコン工事の業者さんが知らないことはないと思いますが、万一、避難ハッチの降下空間に支障が出る位置に据え付けようとしているなら、位置の変更をお願いしましょう。

画像のように狭いベランダの場合は、吊り下げ金具に室外機を固定しますが、スペースが十分にあるベランダとなると床置きになります。
床置きの場合もなるべく避難ハッチから遠い場所に室外機を据え付けます。

ベランダガーデニング

※No:2529990|写真AC

ベランダでの家庭菜園やガーデニングは楽しいとは思いますが、避難経路である場所では、しっかりと通行できるだけのスペースを空けておきましょう。例えば、隣の部屋のベランダとの境を示す「隔て板」の前には、植木鉢やプランターなどをなるべく置かないようにします。避難の際には隔て板を蹴破ることが必要なため、邪魔になるような物を置くことは避難を妨害していることと同じと考えます。ちなみに「隔て板」は職人さんや地域性によりバラバラで、以下のような別の呼び方があります。

  • 仕切り板
  • ベランダ隔て
  • 隔壁(かくへき)
  • 境壁(さかいかべ)
  • 戸境壁(こさかいかべ)
  • パーティーション
  • 蹴破り板

などがあります。ガーデニングでベランダを彩りたい場合は、広めのベランダのある物件を選びましょう。

避難ハッチのない部屋を選ぶ

殺風景になりがちなベランダを、少しでもおしゃれにしたいと考えるのは珍しいことではありません。奥行が2m近くあるベランダならば、室外機、物干し竿、ガーデニング用の植木鉢にプランターなどを置いても、人が通れるスペースを作ることは可能です。避難ハッチがあったとしても目障りにはなりません。

しかし避難ハッチがスペースの3分の1ぐらいを占めるような狭いベランダの場合は、洗濯物を干すのにも苦労します。まして避難ハッチの周囲に私物を置いてはいけないとなると、エアコン室外機の置き方も考えなければなりません。そのような場合は避難ハッチのない部屋を選ぶと良いです。避難ハッチのない部屋は、避難ハッチの設置基準からすると1階または11階以上の部屋になります。物件によっては2階からは角部屋だけに避難ハッチが設置されている場合もあります。しかし限られた物件しかベランダに避難ハッチがない部屋は選べないのが現実です。そうなると、避難通路であることを意識しながらベランダの使い方やコーディネートのしかたを知ることも必要になってきます。手段のひとつとして避難ハッチを目立たなくする方法があります。

避難ハッチを目立たせなくする

ベランダに出ると避難ハッチが真っ先に目に入って何となく違和感がある、段差ができるため洗濯物を干すときに躓いてしまうなど、避難ハッチがあるだけでストレスを感じる人もいます。錆が目立ってくると余計に外観も気になることでしょう。そんなときの場合は避難ハッチを目立たせなくする方法を実践してみるとよいです。その方法とは、避難ハッチを囲むようにウッドパネルなどを敷き詰めることです。
段差の解消と外観の改善が同時に可能となります。

避難ハッチも隠してしまえば良いのではと考えるかもしれませんが、いざという時に、素早く開閉できなければならないため、おすすめではありません。
また避難ハッチの位置が、パッと見てわからなければ定期点検時に指導される恐れがあります。避難ハッチを完全に隠してしまうなら、避難ハッチの操作に支障が出ないようにしましょう。
また避難ハッチがあることを示す標示も欲しいところです。

まとめ

避難ハッチから避難ができない状況として、降下空間やベランダ隔て板周辺に障害物が置かれた場合のリスクについてお伝えしました。ベランダは共用部分ですが入居者が優先的に使用できる専用使用権を有していることもあって、つい物置や趣味の場として活用しがちです。しかし、緊急時の避難経路であることを忘れてはなりません。

ベランダを彩る場合は、

  • 少なくとも人が通れるスペースを確保する
  • 避難ハッチの周辺はモノを置かない
  • 隔て板の前にはモノを置かない

ことを心がけるようにしたいものです。

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消防点検ストア編集部

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