共用部分であるバルコニーに設置されている避難ハッチは、緊急時に階下へ避難するために使用されます。
消防法上では避難設備とされているため、きっちりと建物における設置基準が決められています。避難ハッチの設置基準についての解釈も、取り扱う以上は避けては通れません。また取り付けに関しては、有資格者による届け出、および立会いのもとで工事をしなければなりません。避難ハッチ取り付けの際には、どのような資格が必要なのかについての理解も求められます。使用頻度は少ない避難ハッチですが、雨風に年中さらされるため、どうしても劣化が避けられず、必ず1度は改修が必要になる設備です。所有物件の避難ハッチが、錆や腐食の発生などで改修を検討中のオーナー様や管理会社の方へ、取り付け方や交換費用についての情報も合わせて提供します。
ココがポイント
- 避難ハッチは設置基準の遵守が求められる
- 取付工事の際は有資格者の立会いや届け出が必要
- 一般的な交換のための取り付け方と費用を公開
目次
避難ハッチの設置基準
避難ハッチは避難設備です。法令上8種類に分類されている中で、避難ハッチは「避難はしご」に括られます。ちなみに8種類はコチラです。
- 避難はしご(避難ハッチを含む)
- 救助袋
- 緩降機
- 滑り台
- 滑り棒
- 避難タラップ
- 避難ロープ
- 避難橋
身近に見られる避難設備は、避難ハッチ、救助袋、緩降機、滑り台でしょう。避難ハッチはバルコニーに設置されていて、ふたを開けて吊り下げはしごを伸ばして階下に降ります。
救助袋は真下に向かって、らせん状に身体をゆっくりと回転させながら降りるようなしくみになっています。緩降機は1本のケーブルを使って、ゆっくりと降下する避難設備です。
滑り台は保育園や老人福祉施設などに、2階から1階へ降りるように取り付けられていることが多いです。避難ハッチについての設置基準は、消防法施行令第25条(避難器具に関する基準)および同令別表第1を参照してください。
避難はしごと避難ハッチの違い
前述の避難ハッチの設置基準には、
- 避難階および11階以上は設置不要
- ただし4階以上は避難ハッチ(避難はしごは3階まで)
ということが盛り込まれています。
なぜ「避難はしごは3階まで」ということが書かれているのでしょうか。それは避難ハッチと避難はしごは同じではないからです。
避難はしご
バルコニーの手すりや腰壁に「ナスカンフック」「自在フック」などを、使用時に取り付けて使うタイプを指しています。
避難ハッチ
バルコニーの床に埋め込まれており、ふたを開いて格納されている吊り下げはしごを伸ばして使うタイプを指しています。
※画像引用:オリロー株式会社
有資格者との関わり
避難ハッチに関して避けては通れないのが消防設備士の存在です。消防署への届け出や工事の立会いは、消防設備士甲種5類の国家資格所有者が行うことが決められているからです。消防法による設置基準の遵守の観点からも、消防設備士は関与する必要性があります。また改修工事の際のボルト切断などで火花が飛び、引火の恐れもあるため、安全確保の面でも消防設備士が必要とされます。また消防設備士に代わる民間資格として、消防設備点検資格者もあります。
- 消防設備士
国家資格。甲種と乙種の免状がある。
避難ハッチは甲種第5類に分類されるため甲種の免状が必須。 - 消防設備点検資格者
民間資格。第1種、第2種、特種の免状がある。
避難ハッチを含む避難器具の取り扱いは第2種となる。
それぞれ受験案内などはコチラを参照してください。
避難ハッチの各部名称
避難ハッチの商品構成はメーカーにより異なりますが、一般的な知識として各部名称を紹介しておきます。
そもそも「ハッチ」とは開口部を意味します。特に角型形状の開口部をハッチと称しますが、避難ハッチにおいては、
- 上ふた
- 下ふた
- 本体(中枠)
- ハッチ用吊り下げはしご
で構成されることが基本形です。そのほかに細かい部品を取り付けることによって製品となります。
※画像引用:株式会社ミナカミ
避難ハッチの管理上の注意点
避難ハッチは通常の避難経路が、何らかの事情により使えなくなった場合、緊急避難するための設備です。
また避難ハッチが設置されているバルコニーは、共用部分でありながら避難経路でもあるため、避難ハッチが使えない状態であってはいけません。
例えば、
- ふたに乗って損傷やゆがみを発生させない
- むやみにふたを開けない
- ふたの上や周囲にものを置かない
- 避難ハッチの真下に物干し竿などを通さない
ということが重要になります。しかし避難ハッチやふたに関しては、
- 太陽光が反射してまぶしい
- 日光により高温となってやけどのおそれがある
- バルコニーの外観が損なわれる
- 段差により躓きやすい
などの声があります。もしも避難ハッチが気になるようならば、避難ハッチの無い部屋を選ぶしかありません。
避難ハッチ改修時の取り付け
避難ハッチが劣化し改修の必要性がある場合、そのほとんどはカバー工法により取り付けられます。カバー工法とは、既存の部材を覆うように、新しい部材を取り付ける方法です。屋根や外壁のリフォームなどでも採用される工法のため、一戸建てにお住まいの方はなじみがあるかもしれません。避難ハッチをカバー工法で改修すると、おおむね2時間程度で工事は完了します。実質的に改修のための新しい避難ハッチの取り付けは、カバー工法でしかできません。なぜならば、避難ハッチの中枠はコンクリートスラブに埋め込まれているからです。そのため、わざわざコンクリートを砕いて中枠を交換することはナンセンスと言えるでしょう。
実際の工事は、埋め込まれている中枠にさび止めなどを吹き付けた後、既存の中枠を覆うように新しい中枠(サイズオーダー品)を被せるように取り付けます。それをふまえて、カバー工法の工程を説明することにします。
カバー工法の要領
避難ハッチの改修工事は、消防設備士による届け出や入居者への工事日程の連絡などが必要になります。さらに、改修用の避難ハッチを調達しなければなりません。既製品では微妙に寸法が違うことがあり、現場ごとに採寸してオーダー品を取り付けします。発注から納品までは、改修の数量などにも左右しますが、おおむね1週間から10日ほどかかります。改修用避難ハッチが工事会社に届いてから改修工事はスタートします。
現場での作業手順は、
- 上ふたと吊り下げはしごを撤去
- ボルト類をサンダーで切断
- 下ふたを撤去
- 既設の中枠をさび止め処理
- 改修用ハッチの上ふた取り付け
- 改修用ハッチの下ふた取り付け
- 改修用ハッチの吊り下げはしご取り付け
- 避難ハッチ周囲をコーキング
- 動作と降下テスト
という流れが一般的です。前述したように工事は1か所2時間前後を見ておくと良いでしょう。
避難ハッチ新設時の取り付け
避難ハッチの新設は改修工事とは全く異なり、建築工事の1工程と言っても過言ではありません。そのため新設工事は一切やらない消防設備業者も存在します。例えば新築中のマンションのバルコニーに避難ハッチを新設する場合、重い避難ハッチを階段で高層階まで運ぶということが当たり前のようにあるからです。新築中のマンションでは、棟内エレベーターつまり入居者が使用するエレベーターは自由に使えません。
調整や電力の節約などの理由で停止させていることが多いのです。資材を運搬するために、バルコニー側に取り付けられているエレベーターもありますが、これは予約制になっている現場もあります。
または使用が限定されていることもあるため、勝手に使うことはできない前提なのです。
鉄骨職人の協力が不可避
避難ハッチを新設する際は、鉄骨職人さんの協力は欠かせません。すべて避難ハッチを埋め込むための土台を作るのは鉄骨職人さんだからです。熟練した鉄骨職人さんの施工でも、避難ハッチの中枠の納まりが良くないこともあります。その場合は、鉄骨職人さんはじめ現場監督などと打ち合わせを行い、必要な微調整や加工が必要になります。避難ハッチの新設は、建築工事全体からすると「わずかなボリューム」ではありますが、消防検査に合格しなければ使用できないわけですから慎重に対応することが求められます。そのため取り付けは鉄骨職人さんが主導だとしても、消防設備士が関与すべきなのです。新設の納まりなどは各避難ハッチメーカーへお問い合わせください。
避難ハッチ取り付けの費用
避難ハッチの改修費用は気になるところですが、当社では以下のような価格で提供しています。
【関東1都6県】
【その他の地域】
※600角ハッチ・7段はしご使用の通常品
※発注個数、状況によって価格が変動する可能性があります。
工事の事例と節約実績
劇的に安い価格で提供しているため、全国各地から喜びの声が集まっています。その事例を一部、ご紹介します。
東京都北区 交換台数:8台
物件オーナー様からのご依頼。
大規模修繕工事中に避難ハッチの交換の必要があったためお問い合わせをいただきました。
費用を抑えて交換ができ、物件の収益性向上に貢献できました。
交換費用:1,032,000円 ←約50%コストカット
大阪府大阪市 交換台数:2台
避難ハッチ交換の交換の必要性があり建設会社様からお問い合わせ。
費用を抑えての交換ができ、案件の収益性向上が図れた事例となります。
交換費用:318,000円 ←約37%コストカット
神奈川県相模原市 交換台数:3台
塗装・防水会社様から修繕工事中にお問い合わせをいただきました。
費用を抑えての交換ができ、案件の収益性向上が図れました。
交換費用:387,000円 ←約50%コストカット
神奈川県三浦郡 交換台数2台
管理組合様から、管理会社様の交換費用見積もりが高くてお問い合わせをいただきました。
費用見直しのご提案をさせていただき施工を実施。
サイズの大きいものが1台あり、費用は若干高くなりましたが管理会社の見積もりよりは安く交換を実施できました。
交換費用:322,500円 ←約36%コストカット
ご用命やご相談は、お見積りフォームまたは電話でお問い合わせください。
メールで見積もりの際は20秒で完結します。
まとめ
避難ハッチ改修時の取り付け方や気になる改修のための避難ハッチのコストも公開しました。避難ハッチの改修は、およそ10年に1度のペースと考えてよいでしょう。一度も使われることが無い可能性もありますが、万一の時に、ふたが開かない、吊り下げはしごがサビていて作動しないというトラブルを回避するために、艇的に点検も行われています。改修用避難ハッチの取り付けは約2時間の工事ではありますが、消防設備士による事前の届け出や立会いが不可欠です。バルコニーに出るまでにリビングを通ることになるため、入居者の方の同意と立会いも必要になるでしょう。命を守るためのコストが大幅にディスカウントされているときに、躊躇なく交換しておくことをおすすめします。