避難ハッチ

【解説】避難ハッチの点検内容・点検相場・業者の選び方とは?

避難ハッチなどの避難設備は、消防設備に含まれるため定期的に点検することが義務化されています。※消防法第17条の3の3

この消防設備点検を怠ると消防法第44条第7号の3および45条第3号により罰則が適用されるのは周知の通りだと思います。
ちなみに罰則は、30万円以下の罰金または拘留(30日未満の拘置所収容)という、比較的重いものです。物件オーナーが個人か法人かを問わずに課せられるため、未点検や虚偽の点検報告をすることなく、義務を果たすことで資産価値も守られます。
点検を怠ったことで人命にかかわれば、罰則以上に重い十字架を背負わなければなりません。そこで今回は消防設備点検に注目し、避難ハッチの点検概要や費用相場および消防設備点検業者の選び方などをテーマの中心に、有意義な情報をお伝えします。

ココがポイント

  1. 避難ハッチをはじめ消防設備の点検は義務化されている。
  2. 点検業者選びに必要な7つのチェックポイント
  3. 点検には消防設備士もしくは消防設備点検資格者が必要

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消防点検設備の概要

まず、消防設備点検は、大きく「機器点検」と「総合点検」の2つに分かれます。
機器点検は6ヵ月に1回、総合点検は1年に1回行います。(※1)
それぞれ目的の違いもあり、

機器点検・・外観と簡易的な操作で動作チェック

総合点検・・実際に動作テストして機能をチェックということが消防庁で告示されています。(※2)

消防設備点検の対象は、以下の5つです。

  • 避難設備
  • 消火設備
  • 警報設備
  • 消火活動上必要な設備
  • 消防用水

避難設備は火災の際に避難するための設備です。
避難ハッチ(避難はしご)も避難設備のひとつになります。
緩降機、救助袋、滑り台、避難用タラップ、滑り棒、避難ロープ、避難橋と合わせて避難器具と呼ばれます。

そのほか誘導灯や誘導標式も避難設備であり点検の対象です。消火設備は火災の際にで代表的な初期消火をするための設備のことです。
代表的なのは消火器で、そのほかスプリンクラー、屋内消火栓なども消火設備になります。警報設備は火災の発生を内外に通報、通知する設備です。
具体的には自動火災警報設備、漏電火災警報器、火災報知設備、ガス漏れ火災報知設備などになります。消火活動上必要な設備とは、高層階や地階など火災発生の際に消火活動が難しい場所に設置する消火設備です。
排煙設備、連結散水設備、連結送水管などが相当します。
消防用水は火災発生の際に使う水を貯水しておく防火水槽などです。

※1:消防法施行規則第31条の6

※2:平成16年5月31日消防庁告示第9号

点検の対象となる防火対象物

消防設備点検では、以下の条件を満たす防火対象物については消防設備士または消防設備点検資格者によって実施されることになっています。(※)

  • 延べ面積1000㎡以上の特定防火対象物
  • 延べ面積1000㎡以上の非特定防火対象物で消防長または消防署長が指定したもの
  • 屋内階段(避難経路)が1つの特定防火対象物

上記以外の建物については資格者以外によって点検を実施しても良いですが、資格者による点検を推奨している自治体もあります。詳細については管轄の消防署にお問い合わせください。

※消防法施行令第 36 条第2項

避難ハッチ点検の要領

避難ハッチの点検は、ベランダにお邪魔して行います。
そのため事前に管理会社などを通じて点検のお知らせが周知されることになります。
点検内容は、

  • 腐食やさびの状況確認(階下への水漏れ等も調査)
  • 周辺に動作の妨げとなるものが無いか
  • 吊り下げはしごを伸ばした先に障害物は無いか
  • 吊り下げはしごは動作するか
  • 使用方法ラベルや標識が表示されているか

などが一般的で、目視や動作チェックで確認していきます。点検の流れとしては、

  • 玄関より入室
  • ベランダに出て作業準備
  • 避難ハッチの点検(動作確認など)
  • 終了後は居室内を通り玄関から次の点検場所へ

という手順の繰り返しです。実際にはしごを使って降下するテストを行う場合は、最上階からベランダに出て点検しながら階下に移動します。
1階まで降りると、次は、はしごで上階にもどり吊り下げ用はしごを収納します。
これを最上階まで繰り返す方法を採用する業者もあるようです。すべての避難ハッチのはしごが確実にチェックできるメリットはありますが、最上階の入居者は、点検業者の点検が終了するまで待たなくてはならないデメリットもあります。はしごを使う点検を実施する場合、はしごの真下に荷物があるケースも多く、一時的な荷物の移動や片付けを、避難ハッチのある部屋の入居者に事前にアナウンスすることが必要になります。

点検費用の相場

消防設備点検費用は、当然のように点検業者によって違いがあります。その違いは例を挙げると、3部屋6階建てアパートで、

  • 機器点検13万、総合点検16万
  • 機器点検4万、総合点検4.5万

というレベルです。費用の算出は、点検業者ごとに、

  • 点検個数×単価
  • 点検人員×作業料金(時間)
  • 述べ面積ごとの点検価格
  • 1室×単価

など、建物に応じて使い分けて設定していることから、見積もりの差も大きく相場が掴みにくいと言えます。近隣にある同程度の規模の物件が負担する点検費用を比較することも難しい面があるため、相見積もりやクチコミなどで総合的に判断するしかありません。

点検業者の選び方

定期的に点検が義務付けられている以上、信頼できる点検業者を選ぶことが重要になります。前述したように、点検業者によって費用の相場は幅が広くなると考えると、ますます料金だけで判断するのは難しいかもしれません。やはり信頼して点検を任せられる根拠があり、それに納得できるかどうかが、点検業者を選ぶポイントと考えてよいでしょう。そこで点検業者の選ぶ際の7つのポイントをお伝えします。
初めての点検や業者の変更を検討している際に、参考にしてください。最終的な判断は、打ち合わせの際の相性的なもの、雰囲気、作業の丁寧さなども加味すると良いです。

点検業者を選ぶ7つのポイント

インターネット検索では、たくさんの点検業者がヒットしますが、大前提としては、地元に根付いている業者を探すことを優先します。
地域に関することや他の物件の情報も持っているからです。
それをふまえて以下の7つのポイントを軸にして探すことをおすすめします。

  • 10年以上の経歴
  • 年間200件以上の実績
  • 最新情報を提供できる情報収集能力
  • 改修や改善の提案ができる
  • 見積もりが詳細までわかる
  • 消防署への報告書作成ができる
  • 緊急出動に対応できる

10年以上の社歴

10年以下はダメなのかということではなく、目安程度に考えていただければよいです。
しかし、社歴の長さは信頼の蓄積とも言えるため、ある程度のラインで判断する必要はあると思われます。

従業員に関しても、ホームページなどで消防設備士の在籍数を明示していたり、顔が見える点検業者を中心にピックアップしましょう。
正社員やパート・アルバイトの割合なども確認できるとなお良いです。

年間200件以上の実績

これも100件以下ではダメなのかということではなく、数は信頼の証という観点から、およそ1ヵ月に20件以上をこなす会社を優先しましょうという話しです。

点検の依頼が多い会社は、定期契約している物件が優先されるため、スポット契約では日程に空きがないケースもあります。
今後、定期的に依頼をする前提かどうかも考慮しておきましょう

最新情報を提供できる情報収集能力

法改正による対応力も含め、消防設備の最新モデルなどもアンテナを張っている点検業者は理想的です。

改修や改善の提案ができる

点検により不良個所が出た際のコンサルティングやトータルで物件の防災に役立つ提案ができる会社を見つけましょう。
コストの相談についても嫌な顔をしなければなお良いです。

見積もりが詳細までわかる

点検一式のような書き方ではなく、詳細が書かれている見積書を作成できる会社を選びましょう。

消防署への報告書作成ができる

点検だけをする会社と消防署への必要な書類も作成できる会社では、後者の方を選ぶ価値はあります。
その分のコストはかかるかもしれませんが、一気通貫のサービスは結果としてコスパに優れることは明らかです。

緊急出動に対応できる

突然の誤作動でもしっかりと対応できる体制がある会社を選びましょう。
仮に夜中、警報や非常ベルが誤作動で鳴った場合、連絡が付かない、対応できる人員がいないということでは入居者の安心を奪うことになります。

点検実施の責任者は誰なのか

契約

消防設備点検は有資格者が行うことになっています。「点検の対象となる防火対象物」の節でふれましたが、有資格者とは、

  • 消防設備士
  • 消防設備点検資格者

のことを言います。それぞれの資格について、簡単に説明しておきます。

消防設備士

消防設備士は国家資格であり、免状は「甲種」「乙種」の2種類です。
また特類および第1類から第7類まで消防設備は分類されており、以下のように取り扱いが分けられています。

甲種 甲種または乙種 乙種
特種 第一類 第二類 第三類 第四類 第五類 第六類 第七類

消防設備の分類についてはこちらです。
特類・・特殊消防用設備等
(従来の消防用設備等に代わり、総務大臣が当該消防用設備等と同等以上の性能があると認定した設備等)

第1類・・屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備、共同住宅用スプリンクラー設備

第2類・・泡消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備

第3類・・不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備

第4類・・自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備

第5類・・金属製避難はしご、救助袋、緩降機

第6類・・消火器

第7類・・漏電火災警報器

避難ハッチは第5類に分類されており、点検や改修については甲種消防設備の免状が必要となります。
※出典:消防設備士免状の種類|一般財団法人消防試験研究センター

消防設備点検資格者

一般財団法人日本消防設備安全センターが主催する講習を受講することで得られる民間資格です。
得られる免状は

  • 第1種・・主に機械系統の設備
  • 第2種・・主に電気系統の設備
  • 特種・・特殊消防用設備等

3種類となっています。それぞれ点検できる消防設備は以下のとおりです。

第一種

屋内消火栓設備、スプリンクラー設備、水噴霧消火設備、屋外消火栓設備、共同住宅用スプリンクラー設備、泡消火設備、特定駐車場用泡消火設備、動力消防ポンプ設備、消防用水、連結散水設備、連結送水管、共同住宅用連結送水管、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備、粉末消火設備、消火器、簡易消火用具、パッケージ型消火設備、パッケージ型自動消火設備

第二種

自動火災報知設備、ガス漏れ火災警報設備、消防機関へ通報する火災報知設備、共同住宅用自動火災報知設備、住戸用自動火災報知設備、特定小規模施設用自動火災報知設備、複合型居住施設用自動火災報知設備、避難器具、漏電火災警報器、非常警報器具、非常警報設備、排煙設備、非常コンセント設備、無線通信補助設備、共同住宅用非常コンセント設備、共同住宅用非常警報設備、加圧防排煙設備

誘導灯※、誘導標識※

特種

特殊消防用設備等

※第4類又は第7類の消防設備士のうち電気工事士または電気主任技術者免状の交付を受けている者

資格の取得には、全国の講習実施会場で受講しなければなりません。
なお、5年ごとに法改正への対応など新知識習得のため、講習の受講が必要です。資格取得までの流れ、点検できる設備等の種類、受講料、講習の予定などについては、一般財団法人日本消防設備安全センターの公式サイトをご覧ください。

※出典:消防設備点検資格者 : 一般財団法人日本消防設備安全センター


まとめ

今回は避難ハッチの点検概要や費用相場および消防設備点検業者の選び方についてお伝えしました。避難ハッチを含む消防設備の点検は、半年に1回の機器点検、年1回の総合点検が義務付けられています。それ故に、点検を請け負う業者の選び方、現状の点検費用が妥当かどうかに悩む建物オーナーや管理組合は多いかもしれません。
そのような悩みや不安を解消するために、点検業者の選び方のポイントを7つに絞りました。たった7つの基準で優良な点検業者に出会えるという保証はありませんが、属性による絞り込みは重要です。信頼できる、安心して任せられる点検業者と取引することが、防災への費用対効果と資産価値の向上につながります。

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  • この記事を書いた人

消防点検ストア編集部

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